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いきにんぎょう
活人形
泉 鏡花
「探偵小説第十一集 活人形」春陽堂、1893(明治26)年5月3日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,111 字 · 82 页
とあって捕吏を招集せんか、下枝は風前の燈の、非道の刃にゆらぐ魂の緒、絶えんは半時を越すべからず。よしや下枝を救い得ずとも殺人犯の罪人を、見事我手に捕縛せば、我探偵たる義務は完し。されども本間が死期の依頼を天に誓いし一諾あり、人情としては決して下枝を死なすべからず。さりとて出て闘わんか、我が身命は立処に滅し、この大悪人の罪状を公になし難し。噫公道人情両是非。人情公道最難為。若依公道人情欠。順了人情公道虧。如かず人情を棄てて公道に就き、眼前に下枝が虐殺さるる深苦の様を傍観せんか、と一度は思い決めつ、我同僚の探偵吏に寸鉄を帯びずしてよく大功を奏するを、栄として誇りしが、今より後は我を折りて、身に護身銃を帯すべしと、男泣に泣きしとなん。
下枝が死を宣告され、仇敵の手には死なじとて、歎き悶ゆる風情を見て、咄嗟に一の奇計を得たり。
走りて三たび雑具部屋に帰り、得右衛門の耳に囁きて、その計略を告げ、一臂の力を添えられんことを求めしかば、件の滑稽翁兼たり好事家、手足を舞わして奇絶妙と称し、両膚脱ぎて向う鉢巻、用意は好きぞやらかせと、斉く人形室の前に至れば、美婦人正に刑柱にあり、白刃乳の下に臨める刹那、幸にして天地は悪魔の所有に非ず。