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しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页

青空文庫

12

「深夜の市長」の失踪? 悪魔のように呪われている僕!

これは一体どうしたことだろう。

12

僕は決心して、ガラリと戸を明けた。座敷の中からは期せずして同時に「呀ッ!」という叫び声が聞えた。

「まあ浅間さん、遅いのネ。どこをほつき歩いていたのさ」

と、お照は僕を小僧かなんかのように叱りつけた。

「君は黙って居給え。僕が話をする約束だったじゃないか」

後から立ってきた速水輪太郎が、お照の身体を押えるようにして引留めた。お照はそれは邪慳に払いのけて、猟犬のように飛び出そうとする。それを輪太郎が「これお照さん。――」とウンと引張ったので、彼女はやっと気がついたという風に温和しくなり、僕のために通り路を開けたのだった。

「一体どうしたんです。いま外で聞いたが、『深夜の市長』が居なくなったとか、何かと云うのは……」

僕はオーヴァの襟を立てたままで、丸火鉢の前に座ると、気になることを尋ねた。

「おお、もうそれを聞かれたんですか。いや、前代未聞のことで、僕たち一同心配しているんです。実はこういうわけなんです。……」と、街の科学者速水輪太郎は、黄色い面を僕の方に近づけ、昨夜とはまるで変った慇懃な言葉で事件の内容を語った。