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しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页

青空文庫

その面影! たしかにマスミの妹に違いない。僕は兄さんの名は話に聞いただけであることを説明し、そして尚も質問の矢を放った。

「でも、どんな証拠があって『深夜の市長』が殺したというのかネ。また千代子さんの兄さんは何処で殺されたのかネ」

「なぜかって、あの悪魔が殺したのに違いないのよ」

と町子は応えた。

「違いないだけじゃあ、漠然たる話だネ。証拠がないのなら殺人の嫌疑などを軽々しく口にしちゃいけない」

と、僕はつい役所で聞き覚えある言葉を云ってしまった。すると、町子はカンカンになって怒りだした。

「貴方は何も知らない癖に何を云ってんのよオ。そんなに聞きたけりゃ教えたげるわ。……そう云う話は、確かな人の口から聞いたのよ。動坂三郎先生が、これは秘密だが……といって話して下すったわ。(わしの口からはどうも云い憎いが、四ツ木君はわしを裏切って『深夜の市長』に買われていたらしい。勿論それは四ツ木君だけが悪いわけではなく、あの悪漢『深夜の市長』が莫大な金で誘惑したからそうなったのじゃ。ひどいのは『市長』で、四ツ木君を買収したのはいいが、どうも『深夜の市長』一味の秘密を知って、これを種としてまた寝返りそうに思われたので、とうとう惨酷な制裁を加えてしまったんだ。