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しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页

青空文庫

「ヘン、云ってるよ。あんたが本当にお役人を罷めたら、あたしは逆立をしてあんたの周りをグルグル廻ってみせるわ」

「そうか。じゃそれを娯しみにしているが……あの淡海節に詠みこんだ『この子を生ませたあなた』というのを教えろ」

「知らないッ。……」

「知らない? じゃあヨイショコショ教えてやろう、こっちから……。あの子の父親は……いいかネ……動坂三郎だッ」

「まあ、どうしてそれを……」

「君は彼奴が待合から出てくるのを覘って撃ったのだ。弾丸は美事に命中したのだ。しかし彼奴は死なない」

「そうなのか。確かに当ったのに……」

「防弾チョッキを着てやがるんだ。生命には別条ない。昨夜彼奴の防弾チョッキを見たが、君の呪いの弾丸が二発鋼鉄の上に浅い凹みを造っていたぜ。もし徹りぬけりゃ、心臓を射留めたろう」

「卑怯な男!」

「だがお照さん、今日は君のために、市会の真唯中で彼奴をとっちめてやるからネ」

「ああ、市会でネ。……そういえば、アラもう遅いわよ。けさ早く『深夜の市長』さんから電話が掛って来て、あんたを十時半までに、市庁へ着かせるようにッて!」

「十時半だって……。なぜそれを早く云わないんだ」