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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

暫くすると、又手に取って、三面を開きかけて、もう一度放り出した。やっと目を通したのは、そんなことを四五度も繰返したあとだった。

ところが、そこには、池袋の怪屋のことも、幽霊男の死骸のことも、一行も出ていない。

「オヤ、何だか変だぞ、アア、そうそう、昨夜遅くの出来事が今朝の新聞にのる筈はなかったのだ」

と気がついて、愛之助はガッカリした。夕刊に出るまで辛抱しなければならぬかと思うと、耐らない気がした。

「エエ、なる様になれ。どうせばれるんだ。どうせ死刑台だ」

彼はそんなことを呟きながら、又ゴロリと仰向きになると、あぶら臭い蒲団の襟に顔を埋めた。泥の様にすて鉢な気持である。

だが、やがて思いもかけぬ幸福の風が、彼の人臭い寝床を見舞った。十時に近い頃、昨夜の怪青年が、左右均等のお面の顔を、ニコニコさせて這入って来たのだ。

「吉報です。凡てうまく行きました。お金は何の故障もなく取れました。ホラ、一万円の札束です」

青年はポケットから、百円紙幣の束を出して、ポンポンと叩いて見せた。

間もなく二人は連立って木賃宿を出た。愛之助は太陽を恐れて昼間はいやだと云い張ったけれど、怪青年は一笑に附して、