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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
現場不在証明
「明智君は、どうして私に話してくれなかったのでしょう」
波越氏はやや憤怒の色を現わして、独語のように囁いた。
「それは君、怒っちゃいけない。君まで明智式の論理に染んで、油断をしてしまっては、却って危険だからだ。あの男はその気遣いの為に、態と君を除外して、僕に丈け報告してくれた訳なんだよ。つまり、表裏両道から敵を攻めるという戦法なんだよ。ところが、昨夜の事件で、愈々この二つの論理の正否を確める時が来た。あの事件は今朝の新聞に小さくしか出ていないから、明智君は知らずにいるかも知れない。で、君自身品川の所へ出かけて、一つ様子を見て貰い度いと思うのだよ」
つまり、総監が波越氏を呼びつけた用件というのは、この事であったのだ。
現場不在証明
午後一時、波越警部は、神田区東亜ビル三階の科学雑誌編輯部のドアをノックした。
給仕の案内で、応接間に通る、次に一社員が現われて御用件を承る長髪を綺麗になでつけ、眼鏡をかけた壮年社員だ。
彼は用件を聞いて引きさがると、自身お茶を運んで来て、うやうやしく警部の前に置いた。そして、室を去る時、何故か鼻下のチョビ髭に手を当てて、オホンと奇妙な咳をした。