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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

白い蝙蝠

「エ、何だって、じゃ連名帳に僕の名があるのか。それが二番になっているのか」

「そうだよ。そして、君の次が赤松警視総監だ」

波越氏はそう云って、快活に笑って見せようとしたが、明智の異様な恐怖の表情を見ると、つい笑いが引込んでしまった。

白い蝙蝠

偶然の一致であったか、或はそこに深い因果関係が潜んでいたのか、不穏を伝えられていた岩淵紡績会社の労働争議は、マグネシウム事件の翌日午後に至って、遂に総罷業と化した。

宮崎常右衛門氏の巨万の富は、殆ど岩淵紡績の事業によって築かれたものであった。同氏の優れた経営手腕、及び難き精励刻苦の賜であったことは、勿論だが、階級憎悪に燃えた労働者達にとって、そんなことは問題外であった。極言すれば、彼等の窮極の目的は、会社の運命がどうなろうと、搾取者宮崎常右衛門を、彼等同然の一素寒貧に引落すことであった。

総罷業は見事な統制を以て、已に五日間継続せられた。諸新聞の争議記事は、一日一日と大きくなって行った。

宮崎氏が、奇怪なマグネシウム事件を、何かの前兆として非常な恐怖を抱いたのは、誠に無理もないことであった。彼の身辺には私服制服の警察官ばかりでなく、態々傭入れた武道達者の青年達が、絶えずつき従って、万一に備えた。