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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

変装はしているものの、相手は脛に傷持つ犯罪者だ。うさんなみぶりを見逃す筈はない。とうとう尾行を発見された。

それは電車通りで、空自動車が右往左往していた。奴さんきっとタクシーを呼止めるぞ。と見ていると、案の定、一台の車が彼の前に止った。おくれてはならぬと、明智もあとから来た車を呼止める。

「あの車のあとをつけるのだ」

命じながら乗込もうとした明智は、何を思ったのか、咄嗟に思い返して、その車をやり過してしまった。

前の車も已に発車した。だが、これはどうしたことだ。確かにその車に乗った筈の幽霊男が、町を横切って走っているではないか。つまり彼は乗車すると見せかけて、車内を通って、反対側に飛降りてしまったのだ。自動車の籠抜けだ。明智は早くもそれを感づいて、うっかり空自動車のあとを追う愚を免れたのである。

何という素早さ。怪物は道路の向う側で、もう別の自動車を呼止めた。さっきのとは反対の方角に走っている車だ。明智もおくれじと一台の車に飛乗った。幽霊男も今度は籠抜けではない。そこで、自動車の追っかけが始まった訳である。

走りに走っている内に、いつか見覚えのある町を通っていた。