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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

本物の品川四郎かも知れない。そうでないかも知れない。彼はそれを確める為に、レストランの電話室に這入った。客席からは可成隔っているので、相手に聞かれる心配はない。本物の品川四郎の電話番号を告げて、胸をドキドキさせながら待っていると、果して品川は在宅であった。受話器の向うに、まがいもない科学雑誌社長の声が聞える。二言三言話して電話を切ると、彼は又元の席に戻って、幽霊男の食事の終るのを待った。無論尾行する積りなのだ。

やがて尾行が始まった。

怪物はレストランを出ると、夜店の並んだ賑かな町を、ブラブラと歩いて行く。食後の散歩であろう。若し捕えようと思えば、町の群集は凡て味方だ、造作もないことである。併し、明智は一幽霊男の逮捕で満足はしない。賊の本拠を確かめたいのだ。あせる時ではない。気永にあとをつける一途だ。

幾度も幾度も町を曲って、怪物は果てしもなく歩いて行く。悪人の用心深さで、彼は町角を曲る毎に、尾行者はないかとうしろを振返る。その都度明智が素早く身を隠すと、彼は安心して歩いて行く。だが、何度目かの曲り角で、明智が物蔭に隠れようとする所を、一寸の差で見つけられてしまった。