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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
「さて、そこで、これを読んでくれ給え」
品川は、ポケットから、一通の手紙を出して、愛之助に渡した。
開いて見ると、左の様な文面である。
拝復
御尋ねの場面は、京都四条通りです。撮影日附は八月二十三日です。これは撮影日記によって御答えするのですから、万々間違いはありません。
右御返事のみ。
齋藤久良夫
品川四郎様
「齋藤久良夫というのは、確か日活の監督だね。知っているのかい」愛之助は手紙を品川に返して、云った。
「そうだよ。『怪紳士』を作った監督だよ。知っている訳じゃない。突然手紙で尋ねてやったのだ。感心にすぐ返事をくれたよ。ところで、この手紙が証拠第二号だ。つまりこの手紙によって、『怪紳士』のある場面が、八月二十三日に、京都四条通りで撮影されたことが、確実になった訳だ」
品川はまるで裁判官か探偵の様な言い方をした。八月二十三日というものを、あらゆる方面から研究して、動きの取れぬ様にしようとかかっている。だが、それは一体全体何の為にだ。
「オヤ、こいつは面白くなって来たぞ」
愛之助は薄々事情を悟ることが出来た。なる程、これは品川の云う通り、一大椿事に相違ないと思った。