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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
乞食娘は、まさかそんなことと、尻ごみしていたが、令嬢がドアを開けて突き出す様にするものだから、しぶしぶ廊下へ出て、ひっそりとした邸内を、勝手元の方へ歩いて行った。
廊下を曲ると、向うから書生がやって来るのに出会った。それを見た乞食娘はいきなりキァッと悲鳴を上げて、書生目がけて走って行った。逃げようとしてとまどいしたのかしら。それにしてはどうも様子がおかしい。と見るまに、実に驚くべきことが始まった。
「お前、早く来ておくれ。大変なのよ。私の部屋にね、乞食女が這入って、部屋をかき廻しているのよ。早く、早く、あれを追い出しておくれ」
美禰子さんに扮装した乞食娘が途方もないことを訴えた。
「エ、乞食が? お嬢さまのお部屋に? 飛んでもない奴だ。ここに待っていらっしゃい。すぐに掴み出してやりますから」
書生は何の疑う所もなく、廊下を一飛びに走って、令嬢の部屋へ来て見ると、真黒な顔をした汚い乞食女が、図々しくも令嬢の椅子に腰かけて、悠々とお茶を飲んでいるではないか。
「コラッ、貴様一体何者だ。ここをどこだと思っている。グズグズしていると警察へ引渡すぞ」
書生が恐ろしい見幕で呶鳴っても、ふてぶてしい乞食女は平気なものだ。