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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
だが非常に意外なことには、相手が横丁へ這入ったので、尾行する積りで、ヒョイとその角を曲ると、曲った所に当の男がこちらを向いて立止っていた。
二人はギョッとしてたじろぐ。それを見て男の方から声をかけた。
「あなた方、僕に何か御用がおありなんですか。さい前からあとをつけていらっした様ですが」
飛んでもない変てこなことが起った。よく見ると、まるで人違いなのだ。相手の顔には品川四郎の面影さえない。だが、三浦の家を出てから一度も見失ったことはないのに、いつの間に人が変ってしまったのか、狐につままれた感じである。仕方がないので詫言をして、念の為にあすこにいるあの自動車からお降りなすったのでしょうね。と確めると、そうだとの答えだ。
「変だね。まるで魔法使いみたいだね」
「変装すると云ったって、あんなに顔が変るものじゃないし。……服装はどうだね。赤い部屋で着ていた服はあれだったかい」
「それがハッキリしないんだ。赤い光りの下で、しかも小さな節穴から見たんだからね。似ている様にも思うけれど、オーバーコートの色合なんて、同じのがいくらだってあるからね」
二人は男に別れて、そんなことを話しながら、元の電車道の方へ歩いた。