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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
夕刊の写真に二人並んだ品川四郎のこと
彼の全く知らぬ蔭の世界で、どんな意外な出来事が起っているか、分ったものではないのだ。
青木は突然走る様に歩き始めた。遥かに見えている彼の邸の洋館の二階へ目を据えて、息をはずませ、暗闇の小石につまずきながら、恐ろしい勢いで歩き始めた。
夕刊の写真に二人並んだ品川四郎のこと
青木愛之助は此頃悪夢に悩み続けていた。友達の科学雑誌社長の品川四郎が離魂病みたいに二重にぼやけて、あっちにもこっちにも存在する。しかも顔から姿から声までも、一分一厘違わない二人の奴が、同じ部屋で対面さえしたのだ。彼は品川四郎と一緒になって、そのもう一人の品川四郎を追駈け廻すけれど、相手は、どこか化物じみた風で、巧みに身をかわし、姿をくらましてしまう。青木も品川も、数ヶ月というもの、このいまいましい奴の探索にかかり果てている始末だ。
だが、これまでは別に害をする訳ではなく、ひどく不気味は不気味ながら、直接恐怖を感じる程のことはなかったのだが、最近に至って、ギョッとする様な途方もないことが起った。というのは、ある晩青木愛之助が、名古屋の鶴舞公園で、そのもう一人の品川が、どこかの奥さんとひそひそ話をしている所へぶつかった。