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ふくおうじでん
福翁自伝
福沢 諭吉
02 福翁自伝
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,912 字 · 402 页
米国人の歓迎祝砲
ソレ丈けは大に誇ても宜い事だと思う。今の朝鮮人、支那人、東洋全体を見渡した所で、航海術を五年学で太平海を乗越そうと云うその事業、その勇気のある者は決してありはしない。ソレ所ではない。昔々露西亜のペートル帝が和蘭に行て航海術を学んだと云うが、ペートル大帝でもこの事は出来なかろう。仮令い大帝は一種絶倫の人傑なりとするも、当時の露西亜に於て日本人の如く大胆にして且つ学問思想の緻密なる国民は容易になかろうと思われる。
米国人の歓迎祝砲海上恙なく桑港に着た。着くやいなや土地の重立たる人々は船まで来て祝意を表し、之を歓迎の始めとして、陸上の見物人は黒山の如し。次で陸から祝砲を打つと云うことになって、彼方から打てば咸臨丸から応砲せねばならぬと、この事に就て一奇談がある。勝麟太郎と云う人は艦長木村の次に居て指揮官であるが、至極船に弱い人で、航海中は病人同様、自分の部屋の外に出ることは出来なかったが、着港になれば指揮官の職として万端差図する中に、彼の祝砲の事が起た。所で勝の説に、ソレは迚も出来る事でない、ナマジ応砲などして遣り傷うよりも此方は打たぬ方が宜いと云う。爾うすると運用方の佐々倉桐太郎は、イヤ打てないことはない、乃公が打て見せる。