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ふくおうじでん
福翁自伝
福沢 諭吉
02 福翁自伝
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,912 字 · 402 页
ソコで私は一策を案じたその次第は、当時、明治の初年で余程金もあり、之を掻集めて千両ばかり出来たから、夫れから数寄屋町の鹿島と云う大きな紙問屋に人を遣て、紙の話をして、土佐半紙を百何十俵、代金千両余りの品を即金で一度に買うことに約束をした。その時に千両の紙と云うものは実に人の耳目を驚かす。如何なる大書林と雖も、百五十両か二百両の紙を買うのがヤットの話で、ソコへ持て来て千両現金、直ぐに渡して遣ると云うのだから、値も安くする、品物も宜い物を寄越すに極てる。高かったか安かったか知らないが、百何十俵の半紙を一時に新銭座に引取て、土蔵一杯積込んで、ソレから書林に話して版摺の職人を貸して呉れと云うことにして、何十人と云う大勢の職人を集め、旧同藩の士族二人を監督に置て仕事をさせて居る中に、職人が朝夕紙の出入れをするから、蔵に這入てその紙を見て大に驚き、大変なものだ、途方もないものだ、この家に製本を始めたが、このくらい紙があれば仕事は永続するに違いないと先ず信仰して、且つ此方では払いをキリ/\して遣ると云うような訳けで、是れが端緒になって、職人共は問わず語りに色々な事を皆白状して仕舞う。