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だいにのせっぷん

第二の接吻

菊池 寛

「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页

青空文庫

四

だが、倭文子の姿が見えないのを知ると、安心して階段を上った。

倭文子は、ベランダのてすりに身をもたせて、遠く天城の連山をながめていた。そのさびしそうな後姿が、京子の良心に、ホンの少しばかりこたえたが、彼女は苦笑でまぎらせて、親しげに倭文子の傍へ寄ると、すれすれにてすりに身をもたせた。

「今井さんが、別荘を使って下さって、光栄ですって。倭文子さんにもよろしくって。」

「そう。」

「わたし達のいる間に、一度来たいんですって。」

「まあ。」

「誰がいやなことと思ったので、わたしハッキリ断っておいたのよ。でも、図々しいから、わからないわ。」

「おいでになったら、困りますわねぇ。」

倭文子は、その場合の当惑を予感した。

「いいのよ。あんな人、わたしがうまくあしらって、すぐ追い返してしまうわ。おほほほほほ。」

京子は、五月の海のようにさわやかに笑った。

四

その晩、京子は倭文子が寝た後、自分一人書斎へ行って、手紙を書いていた。三四度、かき直した後、やっと次のような原稿が出来上った。

幾度も幾度も、思い返しましたが、やっぱりお手紙を差し上げて、私の心持をハッキリ申し上げておいた方が、私の心のかなしみを、少しでも少くするように思いますので、思い切ってお手紙を差し上げます。