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だいにのせっぷん
第二の接吻
菊池 寛
「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页
」
京子の言葉は、更につめたかった。
「そうですか。なるほど、僕は倭文子さんから、絶縁状のようなものをもらいました。でも、それがあの方の本心だとは、どうしても思えないのです。」
「おめでたいわねぇ。」
京子は、ニッコリ笑った。
「僕と倭文子さんとがこれきりになると思っているあなたこそ、おめでたいのではありませんか。」
京子は、少しカッとして、
「どちらが、おめでたいか。今にわかってよ。」
「ほんとうです。僕は、倭文子さんに会えなくて、失望して帰ります。あなたの下等な妨害にあって、帰ります。だが、倭文子さんと僕との間があなたの妨害で本質的に少しでも変ろうとは思えないのです。」
「あなたくらい、うぬぼれがつよいと、一生幸福に暮せますわねぇ。」
二人は、恐ろしいにくしみの眼を交しあった。
「倭文子さんは、あなたの飼っている犬ころじゃありませんよ。」
「同時に、あなたにすぐさらわれるような鶏でもありませんよ。」
村川は、京子につかみかかりそうな容子を見せた。
「どうなさるの。」
村川はすぐ思い返した。
「どうもしません。」
そういうと、村川は手早く靴をはいて、戸外の闇へ飛び出した。