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だいにのせっぷん

第二の接吻

菊池 寛

「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页

青空文庫

六

「川辺さんとはどういうご関係ですか。」

「わたしの母が川辺から参っているのでございます。」

倭文子の声は、泣き出しそうな声だった。

「じゃ、川辺さんは母方の伯父さんですね。」

「はい。」

「じゃ、なかなか深いご関係ですね。それで、お母さまはおたっしゃですか。」

「いいえ。」

「じゃ、とっくになくなられたわけですね。お父さまは。」

倭文子は、涙ぐんだ。彼女は何か責苦に会っているように、悲しかった。

「お父さまはおたっしゃですか。」

倭文子は、顔をそむけながら頭を振った。

「いや、どうも大変失礼なことを伺いました。ご両親が、いらっしゃらないのには、しみじみご同情いたしますよ。僕のように三十を越すと、親などはあってもなくても同じですが、あなたのように二十前後で、ご両親ことにお母さまのいらっしゃらないのは、全くお気の毒ですね。」

倭文子は、宮田の言葉をきいていると、先刻からのなさけなさが、口惜しさが、急に大つぶの涙になって、ポトポトと膝の上に落ちた。

六

倭文子の落した涙を、宮田は自分の慰めの言葉の効果だと思って得意になっていた。そして自分の言葉に、こんなにも手答えがあるのなら、この女の心を自分のものにするのは、何でもないと思った。