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だいにのせっぷん

第二の接吻

菊池 寛

「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页

青空文庫

三

」

宮田はテーブルをまわって倭文子に近づいて来た。男性の暴力が目に見えぬ妖気になって彼女を包んだ。不快な悪感が彼女の身体中を流れた。彼女は今まで腰かけていた椅子に身をよせて立ちすくんでいた。

「なぜです。なぜ僕と一緒にいるのがそんなにお嫌なのです。」

宮田の生白い顔が、二倍も三倍もの大きさになって、倭文子の横顔にせまって来た。

「僕だって紳士ですよ。僕が話している中いきなり座をお立ちになるなんて、そんな侮辱をお与えにならないでもいいでしょう。」

宮田は昂奮して息をこらしていた。だが、倭文子は何も考えていなかった。唯一刻も早く宮田の前をのがれたいだけだった。

「すみません。でも、わたくし。」

倭文子はそういうと、左の袖で顔をおおった。むせび泣く声がすぐもれはじめた。

「お泣きになるのですか。困りましたな。」

宮田は二三歩引きさがった。テーブルの上の煙草に手をやった。

「わたし、失礼しますわ。」

倭文子は、そういうと袖で顔をおおったまま足早に部屋から出ようとした。

「倭文子さん待って下さい。」

宮田はあわてて追いすがると倭文子の右の肩をつかんだ。

「どうしても僕の話をきいてくれないのですか。