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だいにのせっぷん

第二の接吻

菊池 寛

「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页

青空文庫

早く倭文子と会いたい。倭文子の心持をきいて、昨夜の事件が彼女に、何の影響をも与えていないことを知って安心したい。だが、どうして彼女と会おうか、子供の遊戯にあるように、彼女の傍には、鬼がいるので、とても行かれないのである。

手紙をかく! だが、それを手渡すこともなかなか困難なことに思われた。それに今度のような大事件の後では、会って彼女の顔色からも、呼吸からも、彼女の態度からも、彼女の心を訊き質して安心したいのである。

彼は、いつの間にか鍛冶橋を渡っていた。家へ帰る時間を、少しでも延ばしたかったのだ。京橋から銀座へ出た。そのとき、ふと彼はある手段を考えついた。

それを考えつくと、彼は少し歩調を早めて、尾張町の交叉点を通りすぎて、カフェ・オーロラに入った。

二三度来たことのあるカフェである。天井と壁とを、青磁色の壁紙で張りつめ、黒色のテーブルと椅子とを用いた瀟洒な装飾が、彼に気に入っていた。

中途半端な時間なので客は少かった。

「いらっしゃいまし。」

彼とは顔馴染の目の少し落ち込んだ、しかしかわいい顔をした小柄なウェイトレスが、注文を聞きに来た。

「アイスクリームある――あればアイスクリーム。