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だいにのせっぷん

第二の接吻

菊池 寛

「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页

青空文庫

」

今井商事会社の社長は、つい今年の正月夫人を亡くしていた。

「どうですか。私にはわかりません。」

「女房といえば、君は女房をもらう気はないか。」

村川は、この突然な問いに甚だしく、狼狽した。京子が、こんなにまで早く、父親にいおうとは思っていなかったからである。村川は、暫くの間返事が出来なかった。

「どうだい。結婚する気はないか。」

村川は、この機会に思い切って倭文子をもらいたい意志を述べようかと思った。その方が、京子の機先を制することではないかと思った。だが、直情径行をもって、政界を切って廻したこの老政治家はそれだけの余裕も見せなかった。

「どうだ。わしの娘をもらってくれんか。わがまま娘だがな、ハハハハハ。」

村川は、京子がこれほど素早く、これほど簡明率直に自分に迫って来るとは思いも及ばなかった。

「どうだ。気に入らぬか。気に入らないこともないだろう。」

断ることは、簡単だった。しかし、京子を断った後改めて倭文子を貰いたいといい出すことが至難なことを考えると、村川は躊躇せずにはいられなかった。

「あまり、突然で急にお答えが出来ません。」

「うむ、それもそうだろう。