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だいにのせっぷん

第二の接吻

菊池 寛

「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页

青空文庫

四

「村川さん、お電話でございます。」

「誰から。」

「川辺さんからです。」

あっ! 京子だなと思うと、村川はすっかり憂欝になって立ち上った。

四

村川は、引きずられるような重くるしい心持で電話口に出た。京子の得意な華やかな声で圧迫されることを予期していたからである。

「もし、もし、村川です。」

「村川さん? わたくし、おわかりになりまして。」

それは思いがけなく、かわいい、中途で消えてなくなるように低い倭文子の声だった。

「まあ! 倭文子さんですか。」

村川は、激しい感激で心が躍った。

「ありがとう。ありがとう。」

村川は、何故となくそう感激してしまった。

「もし、もし。」

倭文子の声は、きれぎれに続いた。

「どこから、かけているのです。」

「白山の自動電話です。」

村川は、話したいことが、沢山あって送話器のなかには入れ切れないので、いらいらした。

「昨日のお電話中途で切れましたから、そのつづき……」

と倭文子がいった。倭文子の明るい言葉で、村川は急にうれしくなった。

「それは、どうもありがとう。一昨日いいました通り、ぜひ、どこかでお話ししたいのです。」

「わたくしも、急にお話ししなければならなくなったのです。