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だいにのせっぷん

第二の接吻

菊池 寛

「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页

青空文庫

四

四

「いいわ。さんざんわたしをふみにじっておきなさい! わたしが、これで泣き寝入りになると思うの、わたし、きっときっと、この仕返ししてあげるわ。」

京子は、そういいながら、羽織の袖を、幾条にも引きさいてしまった。

「ああそう。わたし訊きたいことがあるわ。わたしをどなたに間違えたのかハッキリとおっしゃって下さい!」

村川は、両手で顔を覆ったままだまっていた。

「今おかくしになったってすぐわかることじゃないの。」

京子のいう通り、かくしおおせる事ではなかった。でも、村川の口から、どうしてもいえなかった。

「おっしゃれないの? 卑怯な方! じゃ、わたし当てて見ましょうか。倭文子さんでしょう?」

覚悟をしていた発覚ではあるけれども、村川はからだがふるえた。

「そうでしょう! そうでしょう。」

村川は、うなずくことも出来なかった。

「そうでしょう。やっぱり倭文子さんでしょう。あなたが、ご返事がなければ、ここへ倭文子さんを呼びましょうか。」

京子は、立って呼鈴を押しそうにした。

「そうです、倭文子さんです。」

村川は、あわてていった。

「そう!」

京子は、瞑目した。青い少しも血色のない顔だった。