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だっせんむすこ

脱線息子

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页

青空文庫

と新太郎君は身体が明けば凝っとしてはいられない。

「心細いことを言うのね。見ていらっしゃい。お父さんには内証ですよ」

と母親は少し厭やな顔をした。お父さんに内証で独息子を悉皆馬鹿にしてしまう。男親が厳し過ぎると思って庇う気があるからいけない。

翌日新太郎君は同期卒業で未だ職業にありつかない友達を訪れた。少時話し込んだ後、

「何うだい? 海岸へ遊びに行かないか?」

と誘ったが、

「君は罰が当るぞ。おれなんか働きたくても使ってくれないんだ」

と言って、友人は応じなかった。

「親父に使われるのは又違うよ。怠ければ家の損になるから何うしても勉強する。身骨が折れるぜ。自然神経衰弱になる」

「神経衰弱って柄でもないじゃないか?」

「いや、嘘じゃない。医者が転地を勧めるくらいだから確かなものさ」

「一体君は神経衰弱の徴候を知っているのかい?」

「馬鹿にするない。これでも朝起きると頭の重いことがある」

「それは酒を食って夜更しをすれば誰だって然うだよ」

「次に仕事をするのが億劫でいけない。斯うやって無駄話をしている方が余っ程楽だ」

「それは人類全体の傾向さ。何も神経衰弱だからじゃないよ」