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しんさいこうき

震災後記

喜田 貞吉

「社会史研究 第一〇巻第四号」1923(大正12)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,544 字 · 41 页

青空文庫

九月十八日

おりから部長高橋健自君は不在だったが、後藤〔(守一)〕君から承ると、心配していた通りに黒川真道君累代の蔵書や遺稿はたいてい焼けたという。残念なことをしたものだ。梅原君は予定通り一日に来るには来たが、あの地震でどうもならず、ことに風采がちょっと朝鮮人に似通っているのであぶなくて外出も出来ず、保護を加えて三日に無事東北へ送り出した、今ごろは京都へ帰っているであろうという。これでまず安心して、あの細高い人が自警団から竹槍を突きつけられた時の様子などを想像してみた。新総長大島義脩君は新任以来始めて登庁して、館員を集めて就任の挨拶をしておられるなかばにあのグヮラグヮラだったのだという。

九月十八日(火)

信越線一本限りの往来では汽車の混雑が恐ろしく、今日も西下を見合せ、その代りにかねて気にかかっていた横浜、鎌倉方面へ見舞に行く。山の手線大塚駅から品川へ、品川から東海道線へと、ともかく乗るには乗ったが、汽車の混雑は非常なもので、とても婦人、小児や老人では乗られそうにもない。出入口はどれもどれもギッシリ詰まって、窓口が今なお普通の昇降口となっている有様だ。

横浜、鎌倉方面の震災のはなはだしかったことはかねがね承知してはいたが、来てみればさらに想像よりも以上のひどさで、やっと大船で乗りかえて鎌倉に近づくと、まず円覚寺附近