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まじゅつし

魔術師

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页

青空文庫

併し、たった一人、本当のことを知っている者があった。彼は苦心を重ねてこの穴蔵の秘密を探り出したのです。そして、とうとう源次郎の死体を発見し、源次郎が煉瓦を傷けて書き残した、異様な遺書を読んだのです。そして、彼の生涯を復讐事業に捧げる決心をしたのです。それが誰であったかは、云わずともお察しでしょう。源次郎の一子奥村源造です。即ちかく云う私なのです」

闇の中の声がパッタリ途絶えた。

「牛原さん、冗談はいい加減にして下さい。いたずらが過ぎますぜ。こうして私達を思う存分怖がらせて置いて、あとで大笑いをなさろうという訳でしょう。ハハハハハ。その手には乗りませんよ」

玉村氏は震え声で、夢中になって打消した。それを信じるのが、余りに恐ろしかったのだ。

「冗談ですって?」

闇の中の不気味な声が答えた。

「あなたは冗談やなんかでないことを、知り抜いておいでなさる。さっき、例のダイヤモンドをお見せした時から、あなたは心の隅で私を疑っていた。若しやこの男が、あの魔術師といわれる兇賊ではあるまいかとね。その通りですよ。私が得二郎氏を殺した本人であればこそ、あの宝石を持っていたのですよ。