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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
扉は厳重に閉っていたのだし、水の落ち込む穴から地上へ抜け出すなんて、屈強な男子にも出来ない芸当だ。とすると妙子さんは、一体全体どこへ消え失せてしまったのであろう。
イヤ、消え失せたのは、妙子さんばかりではない。魔術師の奥村源造も、どこへ逃げ去ったのか、何の手掛りも残さず、それに、もっとおかしいのは、肝腎の明智小五郎と賊の娘文代の二人が、いつの間にどこへ立去ったのか、探しても探しても影さえ見えぬのだ。
では、彼等は一体どこに何をしていたのか、玉村父子は首尾よく危難を逃れたのだから、その方は一先ずお預りとして置いて、作者は明智と文代の其後の行動を、読者諸君にお知らせしなければならぬ。
玉村父子救出しの見込みが立つと、明智はもう、その場にクズクズはしていなかった。彼は早くも、妙子さんの姿のないことを見て取り、文代に尋ねると、
「アア、あたし思出しました。あの人達は、妙子さん丈け命を助けて、船へ連れて来る様な相談をしていたのです」
との答えだ。
「それにしても、どうして穴蔵から連れ出したのでしょう。特別の通路でもあるのですか」
「エエ、あたし、それも知って居ります。