轻松读懂日语经典作品
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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
「お願いだ。殺してくれ。殺してくれ。この上生恥をさらすのは耐らない」
と世迷言をわめき立てた。
「お父さん、お父さん」
文代も、父のあまりのみじめさに、声を上げて泣き出した。
可哀相だ。併しそれだからと云って、この罪人を許す訳には行かぬ。まして、故もなく殺すことが出来るものではない。
「何という醜態です。悪人なら悪人らしく、正しい裁きをお受けなさい」
明智がつき放したので、源造はたわいもなく船底にぶっ倒れたが、暫くすると、ふと何か思い出した様子で、ピョコンと起上り、半狂乱の体で階段を駈け昇って、自分の部屋へ飛込んで行った。
戸棚を探すと、あった、あった、黄色い小さな薬瓶。これさえあれば、何も生恥をさらすことはない。
彼は目をつむって、その薬をゴクリと飲みほした。そして、グッタリと椅子に腰をおろし、空ろな目で、遠くの方をじっと見つめていた。
「アア、とうとうそれを飲みましたね」
明智が這入って来て、やっぱりニコニコしながら声をかけた。
「どうです。苦しいですか。あの薬どんな味がしましたね。変じゃなかったですか。シャンパンみたいな味がしなかったですか」
源造はそれを聞くと、不気味な表情で、ニヤニヤ笑った。