轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
彼はこの頃気がかりな父の身辺を守る為に、人知れぬ苦労をしているのだ。
話そうか、どうしようか。若しあれがただのいたずらだったら、忙しい父に無用の心配をかけることはないがと、迷っている内に、車は大森駅を過ぎて、もう山の手にさしかかっていた。とっぷり日が暮れて、ヘッドライトが点ぜられた。
「お父さん、僕はもっと用心をした方がいいと思いますね」二郎は思い切って云い出した。
「お前、あいつのことを云っているのかい。充分用心しているじゃないか。雇人も増したし、わしの往復にはこうしてお前がついていてくれるし」
「駄目ですよ。僕の想像が間違いでなかったら、あいつは、もう僕等の家の中へ這入り込んでいるんですよ」
と、二郎は三日間の出来事をかいつまんで話した。すると父玉村氏は笑い出して、
「馬鹿馬鹿しい。お前の気のせいだよ。いくらなんでもあの大勢の雇人の目をかすめて、家の中を歩き廻ったり出来るものかね。魔法使いじゃあるまいし」
「イヤ、それが油断です。あいつは魔法使なんだ。福田の叔父さんの時で分っているじゃありませんか」
云い争っている内に車はいつか玉村邸の長いコンクリート塀に添って走っていた。