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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
可成重傷ではあったけれど、致命傷ではない。妙子は恐怖の余り一時気を失ったばかりだ。
負傷者は時を移さず大森外科病院へ運ばれたが、彼女はその前に已に意識を恢復していた。刑事が「犯人の顔を見たか」と尋ねると、「顔は見なかったが七尺もある様な、恐ろしい大男だった。何かしら天井につかえ相な黒い塊だった」と答えた。分ったことはただそれ丈けで、他には髪の毛一筋の手掛りもなかった。短刀は玉村氏が事件以来護身用にと妙子に与えて置いた品であったし、今度は福田氏の場合と違って、壁に巨人の手型も見当らなかった。
だが、たった一つ丈け、犯人の残して行ったものがある。それは巨人の手型などに比べて、もっと現実的な、怪賊の傍若無人をそのまま語っている様な、恐ろしい代物であった。
というのは、一枚の白いカードが妙子を突刺した短刀の根元に、丁度鍔ででもある様に、貫かれていたのだ。しかもそのカードには、いつもの不気味な筆蹟で、4という数字が大きく書いてあった。
妙子が病院へ運び去られたあとで、現場に居残った人々の間に、初めてこのカードが問題になった。そこに記された4という数字は、一体全体何を意味するのかということが問題になった。