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まじゅつし

魔術師

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页

青空文庫

「何だって? 僕が毎日手紙を上げたって? そんな筈はないよ。兄きや妹のことで、手紙どころではなかったのだからね」

洋子が変なことを云ったので、二郎はびっくりして聞返した。

「でも、ちゃんとあなたの名前でお手紙が来ているのですもの」

「じゃ、どんなことが書いてあった? 僕は全く覚えがないんだ」

「それが分らないの。二郎さん、しらばくれているんでしょ。暗号の手紙なんか書いて置いて」

「暗号?」二郎は何かしらハッとした。「暗号って、どんな?」

「まだ、あんなこと云っていらっしゃるわ。文句もなんにもなくて、ただ数字が書いてある切りなんですもの。暗号じゃなくって」

「エ、エ、数字だって? 数字だって?」

「エエ、五から始まって、一日に一つずつ減って行くの、四、三、二、一、という具合に」

二郎はそれを聞くと、真青になって、思わず立上った。

「洋ちゃん、それ本当かい。オイ、大変だぜ。その手紙は、福田の叔父さんを殺した、あの賊が書いたのだ。兄貴も妹も、同じ手でやられたのだ」

「マア!」と云った切り洋子は真青になった。

「で、『一』という手紙はいつ受取ったの。若しや……」

「エエ昨日ですわ。