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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

今になって事情をうちあけて、連判状など渡そうものなら、そのような大切な物を持っていながら、何故今まで隠していたかと、さげすまれないものでもない。

きっとさげすむに相違ない。

と、桂子は支持を止め、浮藻は愛してくれなくなるだろう。

(これが俺には何よりも辛い)

そこで彼は今も連判状を、懐中に秘めているのであったが、心の重荷に堪えられないのであった。

「姫君様」

と右衛門が、また少しイライラしながら云った。

「いつまでこのような林の中に、鬼火の姥などと対陣し、止どまりおるのでござりまするかな?」

「右衛門や」

と桂子は云った。

「ほんのもう少しの辛抱だよ。……細作がかりの風見の袈裟太郎が、おっつけ京から帰って来ようから、そうしたらわたしたちは善処するよ」

その言葉の終らないうちに、林を分けて一人の男が、矢のような早さで馳せつけて来た。

それは風見の袈裟太郎であった。

「六波羅から出ました兵の数、おおよそ五百騎にござりまして、今街道を走らせおりまする。この大藪地へ到着しまするも、間のないことと存じられまする」

怪火点々

桂子は武者ぶるいして立ちあがった。

「六波羅勢わずか五百騎というか! ……牽制する手間暇はいらぬ! ……機会は来た、さあ右衛門、退き鉦をお打ち、さあ退き鉦を! ……」