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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
恐ろしい邪魔がはいったからである。
姉の桂子その人であった。
邪魔の主は飛天夜叉なのであった。
そう、飛天夜叉の桂子が、小次郎に恋してしまったのであった。
すくなくとも浮藻にはそう思われ、そう思われる理由があった。
もう桂子は以前のように、浮藻と小次郎とを勝手自由に、接近させては置かなかった。時々接近しようとすると、一種の眼をもって二人を睨み、優しく穏かで上品ではあったが、一種の声をもって二人を制した。
そうしてそれはその二人が、成熟しきった男女なので、かるはずみの恋をとげることを、監督者として警戒するという、そういう意味のものではなかった。
その睨みは嫉妬の睨みであり、その制止も嫉妬の制止なのであった。
そうして桂子はいつの場合でも、小次郎を他所へやろうとはせず、自分の側へばかり引きつけて置いた。
そうして小次郎へ話しかける、桂子の声や態度には、媚があり艶きがあり、哀訴があり祈願があった。
恋でなくて何んだろう!
それにしても浮藻には不思議であった。
(恋を封じられているお姉様が、まあどうして今になって、小次郎様などを恋するのであろう?)
このことが浮藻には不思議であった。