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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

足を踏み外して谷へ落ちて行く、土岐頼春の姿であった。

卯ノ丸が窓から地上へ飛んだ。

「化物!」

人を誤まって斬り、呆然としていた小次郎の眼へ、女を抱えた大猿の姿が、まこと化物さながらに見えた。

「おのれ!」

やにわに峰打ちにかけた。

悲鳴!

浮藻を思わず放し、卯ノ丸は木へ馳け上がった。

「助けて――ッ」

と気絶からさめ、浮藻は叫ぶと飛び上がり、夢中で林へかけ込んだ。

「やア! 浮藻! 浮藻だ浮藻だ!」

追おうとした小次郎の背後から、

「くたばれ――ッ」

と大鉞が!

「助けて――ッ」

と浮藻の声!

「浮藻だ浮藻だ! ……おのれ右衛門、また邪魔な所へ! 邪魔な所へ!」

「くたばれ――ッ」

と二度鉞が!

ひっ外して、

「浮藻殿オ――ッ」

追おうとする小次郎の行く手を遮り、仁王のように突っ立った右衛門、

「そいつがいけねえ、その浮藻殿オ――ッが! くたばれ!」

とふり上げた大鉞!

それをあたかも支えるかのように、この時長柄が突き出された。

「右衛門!」

「あッ、お姫様ア――ッ」

桂子が高く立っていた。

「助けて――ッ」

と遠退く声!

そっちを目がけて小次郎は走った。

転落して行きながら頼春は思った。