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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
さらに主上におかせられては、庶民訴訟出来の時、下情上に達せざるあらば、公平裁断を欠くものあらんと、記録所を置かれて出御ましまし、直きに訴えを聞こしめす。さらに八ヵ条の徳政を行い、仁政の範を垂れ給う。しかるに何んぞや北条高時、陪臣執権の身をもって、文保のご和談に口を藉り、今上を廃し奉り、持明院統を立てんとす。人臣の身をもって皇位継承に、容喙するの無道なる、不忠不義至極とおぼゆるぞ」
御門跡の御声はいよいよ鋭く、ますます熱を持って響かれた。
「しかも高時その者たるや、性昏愚にして放縦無頼、酣飲を事として政を忘れ、闘犬、田楽にその日を過ごす。補佐する高資に至っては――長崎高資に至っては、貪慾にして苛察の小人、賄賂を貪り訴訟を決し、私情をもって人事を行い、ひたすら威服を擅にす。……人心北条氏を離れおるぞ!」
叱咤するような御声であった。
資朝をはじめ附き添う人々、ことごとく頭を地に垂れている。
「ここに至って主上におかせられては、後鳥羽上皇の御志、朝権恢復の御志を継がれ、そちをはじめとして俊基など、誠忠志を同じゅうするもの、主上を翼賛しまいらせて、今度の挙を計りたるに、われ若年とはいいながら、仏門に帰せし身とはいえ、直接謀議にあずからず、遺憾至極におぼゆるぞ」