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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

「わしが何をよ? 何をするのじゃ?」

「小次郎をすてては置かれまい」

「…………」

「すてて置けば殺されよう」

「…………」

「助けずばなるまい。是が非であろうと」

「…………」

「姥の力でやるひになれば、助けることなど訳ない筈じゃ」

「わけないとも」

と、姥は云った。

「法力でやれば訳はないよ。……が助けてやった後で……」

鬼火の姥は好色残忍の、凄じい光を眼に漂わせた。

間もなく巫女と山伏とが、乱痴気さわぎから姿を消した。

でもしばらく経った時、厩舎の横の納屋の前に、鬼火の姥の御幣そっくりの、白い姿の立ったのが見えた。

両手が額に合掌されていた。

眼が納屋の戸を睨んでいた。

と、ひとりでに錠の外れる、ピーンと云う音が聞こえて来た。

小次郎が冥想からさめたのは、この錠の外れた音からであった。

小次郎はにわかに恍惚となり、心も体も自分の所有でなく、他人によって勝手自由に、使われているように思われて来た。

と、いつか小次郎は、暗い寒い納屋から出て、どこかへ連れて行かれるような、そんな気持ちにとらえられて来た。

ボッと薄青い光の中に、いつか小次郎は坐っていた。

側に一人女がいた。