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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
範覚は闇の中に佇みながら、このことばかりを考えた。
一人の侏儒が長い廊下を、巨大な頭を左右に振り、子供のようにヨチヨチした歩みで、でも一生懸命にはしりながら、廊下の左右に出来ているところの賓客――むしろ囚人ともいうべき、捕われ人たちのいる部屋部屋の窓と、その扉とを閉鎖していた。
扉へは外から錠を下ろした。
その侏儒が廊下を曲がって、ほかの廊下の方へ姿を消した時、鈴の音が聞こえて来た。
と、廊下の遥か向こうへ、血紅色をした灯の光が、一点朱を打ったように現われたが、それがだんだん近寄って来た。
漢権守様の一行なのである。
黒の法衣を着た老いた僧が、青銅で造った大形の龕燈を、両手で重そうに捧げた後から、稚子輪に髪を結って十五、六の美童が、銀の鈴を振りながら、側目も振らず歩いて来、その後から具足をつけた二人の武士に、その左右を護衛されながら、眼のある位置へだけ二つの穴をあけた、白の裾長の被衣めいたものを、分銅形に着た漢権守が、その背後に活躰解剖の犠牲を、担架に載せたのを従えて、悠々と足を運んで来た。
担架の上の犠牲者の体には、布が一杯にかけられていたので、何者であるかわからなかった。