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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
そうしてまことに不思議なことには、この城の他の囚人たちは、この城の中ならどこへなりと大概の所へは行くことを許され、ほとんど自由を許されていたのに、彼ばかりには許されていなかった。
で、彼はこの城へはいって以来、この部屋ばかりに寝起きしていて、食事の世話や身のまわりのことなどは、一人の老婆によって扱かわれていた。
そうしてここが漢権守の、恐ろしい住居ということや、活躰解剖の真相なども、その老婆から聞かされた。
もっとも彼はそれ以前から、漢権守という人物の噂や、
(はいったら永久出ることの出来ない、この世の活き地獄)であるその居城の、凄じい噂は聞き知っていた。
(それにしてもこの城へはいって早々、浮藻が活躰解剖の、犠牲などにされようとは!)
小次郎は猛然と床から飛び起き、扉の方へ走って行った。
「開けろ! あけてくれ! この扉をあけろ! ……助けないでおこうか、助けないでおこうか! ……浮藻よ浮藻よきっと助けるぞよ! ……おおおお頼む、この扉をあけてくれ! ……」
小次郎は全身を力まかせに、扉へ叩きつけ叩きつけた。
もちろん扉は開かなかった。
そうして誰もが答えなかった。