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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

と、合図らしい太鼓の音が、櫓の一つから鳴り渡った。

とたんに塀が一斉に崩れた。

塀は二重に拵えてあり、その一重を切って落としたからである。

千人あまりの寄せ手の勢は、折り重なって塀の下になった。

そこを目がけて櫓々から、大石大木を投げ下ろした。

七百あまり打ち殺され、寄せ手はにわかに怖毛立ち、潮の引くように退いた。

(ははあこれが今日の兵法か。……味方の一兵をも損じないで、大勢の寄せ手を退けたところ、正成らしいやり方じゃ)

西櫓の窓から見下ろしていられた大塔宮はそう思われた。

翌日も翌々日もその翌日も、寄せ手は懲りずまに攻めよせたが、そのつど正成の奇計によって、退却させられる憂目ばかりを見た。

四日目の夜は大暴風雨であった。

その暴風雨を貫いて城から不意に火の手があがった。

「や、燃えるわ、城が燃えるわ!」

と、寄せ手は事の意外に驚き、これも正成の奇計ではないかと、なかばは危ぶみながら眺めていた。

火はいよいよ燃え盛った。

そこで寄せ手の勢は門を破り、城の中へこみ入った。

ほとんど城兵の影はなく、大穴がいくつか掘られてあって、そこに死骸が投げ込まれてあり、積んだ焚木が燃えていた。