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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

「や、燈火が消えた! どうしたというのだ!」

鬼火の姥は不意に云って、不安そうに野を越えて館の方を見た。

日野資朝卿の館の燈火が、いかさまこの時不意に消えて、その上そこから叫び声や喚声が、風に乗って聞こえて来た。

鬼火の姥は立ち上がった。

「さては子供たちやりそこなったか」

突っ立ったままで茫然と、館の方をいつまでも眺めた。

と、桂子が嘲けるように云った。

「姥よ、見透しはどうなったかよ」

「…………」

「ははあさては鬼火の姥よ、手下を――子供をお館へ忍ばせ、何か悪いこと巧らんだね」

「…………」

「今度の企て破れると云ったが、どうやらお前さんの企ての方が、破れたような格好だね」

「剣戟の音が聞こえるわ! ……あッ、斬られた! 子供が斬られた! ……あッ、また斬られた、子供が斬られた!」

鬼火の姥は地団太を踏んだ。

嵐が勢いを加えて来た。

枝葉が揺れ、病葉が舞い落ち、焚火が靡き、草が翻り、そうして姥の白髪と白衣とが、白いのように閃いた。

「宮方に加担し味方をして、謀反を企てる奴ばらの、連判状を奪い取り、探題様へ差し上げようと、子供達を多数忍び込ませたが……あッ、庭の隅へ追いつめられ、また斬られた斬られた!」