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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

「うるさい! 黙れ! 時刻が経つわい!」

「極悪といおうか大逆といおうか、この日本の人間として、行なうまじきを行なって……」

「まだ云うか! その頬げた!」

「ご先祖を恥ずかしめ家を穢し!」

「愚か者めが、何を云うぞ! その家を立てるため栄えさせようため、今度の企てたくらんだのじゃ!」

「やがては……すぐにも……兄者人の命も……」

「死なぬの、なかなか、それどころではない、車の庄の主として、長く栄えて冥加得る気じゃ!」

「あくまでご改心なされぬお気なら……」

「よく聞け、見ろ、今夜のありさまを! ……いつもは篝火諸所に焚き、宮様警護の家の子ども、槍薙刀をひっさげて、館の内外に充ちているのに、今夜に限ってこの寂しさ! 何故じゃ? 云おう、明かしてやろう! みんな俺のやったことよ! 彼らにしたたか酒くらわせ、遠侍や廊の詰め所に、夢こんこんと結ばせているのじゃ! ……さてそこでこの右源次様が、合図の太鼓をドンと打つ! と、玉置の荘司から、よこしてくれた荒くれどもが、伏せてあるところから一斉に立ち、館へこみ入りこみ入って! ……が、もしそいつが仕損なったら、戸野の大弥太が熊野定遍の……」