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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

その時荘司の家来らしい武士が、五人ほど連れ立ってやって来た。

四人の武士は堂の外に残り、年かさの五十近い武士ばかりが、お堂の中へはいって来た。

芋ヶ瀬の荘司よりの使者であった。

宮家の前へ膝行し、おずおずした声で口上を述べた。

「熊野三山の別当定遍、関東よりの御教書なりと申し、大塔宮様にお味方する者は、陰謀与党の輩と認め、関東へいちいち注進いたす趣き、で、今日大塔宮様を、この道より左右なくお通し申し上げては、後日の咎めおそろしく、難儀いたす次第にござります。……さりとて、宮様を抑留いたしましては、臣の身として恐れ多く、主人儀当惑いたしおりまする」

ここで使者は口をつぐみ、おそるおそる宮家を仰ぎ見た。

宮家は無言で正視され、八人のお供の人々も、固唾を呑んで黙っていた。

「ついては……」

と、使者は後をつづけた。

「お供のうち、しかるべき名あるお方を、一両人賜わりたく、さすれば、そのお方を、武家の手に渡し……」

宮家は烈しく御咳をせかれた。

(ならぬ!)という意味の御咳であった。

使者の武士は、ハッとしたようであった。

でも、おずおずと後をつづけた。

「この儀ならぬとのご諚にませば、ご紋の御旗いただきたく、さすればこれを証拠の品とし、関東方へ引き渡し、合戦いたせしと申し陳じまする」