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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

(さては芋ヶ瀬の荘司の手の者、錦旗を取り返された腹癒せに、討手の勢を向けたらしいぞ。何ほどのことがあろう、追い散らせ!)

と、お供の面々は競い立った。

しかし近づいたのをよくよく見れば、芋ヶ瀬の荘司の手の者ではなく、見覚えある竹原入道の家来で、それも日頃から宮家に対し、まめまめしく仕えた者どもであった。

「これはこれはいかがいたした?」

村上彦四郎が声をかけた。

すると彼らは口々に云った。

「宮様ご一行竹原館を出られ、吉野へご潜行あそばされましたと、昨日呉服様より承まわりました」

「その呉服様仰せられますには、吉野へまでの道々には、宮家に異心抱く者あって、宮様のご安危心もとなし……」

「ついてはそちたち後お慕いし、ご安泰の地までお供せよと……」

「で、参りましてござります」

「おお呉服が? そうであったか」

宮家は御涙を催おされた。

「大儀であった。供して参れ」

こうしてご一行は三十四人となり、小原の方へ進まれた。

木戸をしつらえ、逆茂木を植え、関を設けた玉置の荘司の、物々しい館が遥かあなたに、木立ちの間にすけて見える、そういう地点まで辿りついた時には、昼を少し過ごしていた。