轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

と、不意に、

「小次郎!」

と呼ぶ声が、どこからともなく聞こえて来た。

ギョッとして二人は足を止めた。

「小次郎や」

という声がまた聞こえた。

それは頭上から来るようであった。

振り仰いだ二人に見えたものは、薄白い築地を蔽うようにして、黒く茂っている植え込みを抽んで、聳えている高殿の姿であり、その高殿の廊の欄干に、のしかかるように体を寄せて、じっと二人を見下ろしている、絵本で見た玉藻前のような、飛天夜叉桂子の姿であった。

二人はハ――ッと息を飲み、足を釘づけにしてガタガタ顫えた。

と、桂子の右の手が、高く頭上にかざされて、長い袖が絞れ渦巻いて、車輪のように廻ると見えた。

瞬間、小次郎の体は宙に浮き、築地に添い植え込みに添い、高殿の方へ釣り上げられていた。

「あッ、あッ、あッ」

と云ったかと思うと、浮藻はグラグラと眼が廻った。

「神様! おおおお、お助けくださりませ!」

口の中でそう叫び、あまりの恐ろしさに眼を閉じた。

でもその眼をひらいた時には、もっと恐ろしい光景が――高殿の廊で二人の男女が、抱擁している光景が、悪夢のように映って見えた。

「余りな……お姉様……あんまりな!」