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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
「わたくし事は土岐小次郎と申し、土岐十郎頼兼の一族、宮方の者にござりまする。雑兵に姿やつしまして、今日の戦いにも出でましてござるが、死に場所を得ず死に遅れてござる! ……村上義隆殿にござりますれば、義光殿のご子息の筈、お父上のお見事なるご最期は敵軍の中にまぎれ入り、この眼にてさっき方見申してござる! ……忠義の亀鑑、武士の手本、感佩いたしましてござりまする! ……ご子息の貴所様におかれましても、敵の将卒多く討ちとり、ここにてご生害と見申した。……不覚者ながら、お望みにまかせ、わたくしご介錯仕りましょう」
土岐小次郎はそう云って、腰の太刀をしずかに抜いた。
「正中の変に宮方に属し、忠誠の武名あげられましたるところの、土岐頼兼殿のご一族とな! あら嬉しや由緒ある武士に、介錯されて父の後追えるわ!」
義隆は残んの夕陽の中で、顔をほころばせて笑ったが、
「お頼み申す! いざ!」
と云うや、鎧通しで腹を引いた。
「…………」
閃めかした小次郎の太刀と共に、若武者の首は地に落ちた。
藪の裾を深く掘って、その首級を埋ずめた小次郎は、立ち去りもせず尚しばらく、愁然として佇んでいた。