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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

……それにさ俺にしても姥を取られると、ほんとうのところちと不便だ。……だからよ俺にまかせて置け!」

頼春の妻は早瀬と云った。

大変美しい情の深い、良人思いの女であった。

まだ年も若かった。

この頃彼女は心配であった。

良人の頼春の様子が変わって、憂欝になったからである。

(辛いことよ)

と早瀬は思った。

(何か隠しておいでになる)

そんなように思われてならなかった。

(年月つれ添う妻の妾に、ものをかくすとは何んということぞ!)

こう思うと悲しく怨めしく、見すてられたような気持ちもし、すこし良人が憎くさえ思われ、どうあろうと良人の心の秘密をさぐり、自分の力でそれを消して、以前のように朗らかで気軽な、坊やのような人にしなければならないと、こう思ったりするのであった。

日野別館の無礼講に列し、連判状へ血判して以来、事実頼春は憂欝となった。

心が迷っているからであった。

宮方へお味方仕ると、血判までして誓った以上、宮方へつくのが至当なのであるが、さてそうして合戦となる、と、可愛い妻の父、斎藤太郎左衛門利行殿を、敵に廻して戦わなければならない、ではいっそのこと返り忠をして、武家方すなわち六波羅方へつこうか? 一族の十郎頼兼や、多治見ノ四郎二郎と戦わねばならぬ。