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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

小次郎の美貌もそうなのであった。

で、浮藻は泣き出したのであった。

「そうねえ」

と桂子は眉をひそめて云った。

「小次郎は少しばかり綺麗すぎるねえ。……でもそれが取り柄なんだよ。……そんなに小次郎が美しいから、妾は連れて来たのだよ。……役立てることがあろうよ。……でも充分仕込まなけりゃアならない。……一磨きも二磨きも磨きをかけなけりゃア」

間もなく小次郎は姉妹に連れられ、館の奥へ通って行った。

驚くべき光景がそこにあった。

見霞むばかりの広い部屋で、二十人あまりの男や女が、立ったり坐ったり飛んだり刎ねたり、泣いたり喚いたり、笑ったり吼えたり、歌ったり舞ったりしているではないか。

眉も眼も口もペロリと下がった、いかにも悲しそうな顔をした、四十あまりのしなびた男が、涙を流し眼を手で蔽い、ウロウロと部屋を歩きながら、

「おお悲しや何んとしようぞ。ご主人は死なれましてござります。永い永いご病気の果てに、死なれます。……おおおお何んとご生前には、ご親切で情深こうございましたことか! ……あのご主人様に死なれましては、明日から私はどうしようぞ。……食う事が出来ない。