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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
と叱るように声をかけ、ふり返り睨んだ武士があった。
たった今しがた起きたばかりの、そうしてそこで髪を調えていた、土岐十郎頼兼であった。
武装している時綱の姿を見ると、一切の事情を知ったらしく、
「心得たり!」
と大音に呼ばわり、傍らの太刀を取り上げて立った。
つづいて側なる障子一枚を、無造作に足で踏み破り、六間の客殿へ躍り出た。
時綱もすぐに後を追った。
「…………」
「…………」
問答をする必要はなかった。
当面の敵を討って取り、ともかくも遁がれようと思ったらしく、頼兼は奮迅の勢いをもって、ただし天井に鋒をあてては、刀折れて不覚をとるであろうと、掬い斬りに斬りかかった。
(この敵広庭へおびき出し、あわよくば生け捕りにしてやろう)
こう時綱は考えた。
で、うち払いうち払い、背後さがりに退いた。とうとう広庭まで走り出た。
が、必死の頼兼の、鋭い太刀先には敵すべくもなく、次第に時綱はあやうくなった。
「頼春頼春!」
と時綱は叫んだ。
「背後に廻れ! 加勢頼むぞ!」
頼春は時綱の遥か背後の、木立の蔭に佇んで、茫然とした心持ちで眺めていたが、こう云われてフラフラと木蔭を出た。