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オリンポスのかじつ
オリンポスの果実
田中 英光
「文学界」1940(昭和15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,277 字 · 147 页
だけど負けたのは恥かしいねエ」とかなんとか同じ文句を繰返しているうち、監督のHさんから肩を叩かれ、「どうも君みたいな酒豪にはホッケエ部で、太刀打できるものがいないから、頼むから帰って寝てくれよ」とにこやかに訓され、「はい、はい」と素直に立ち上がると、自分の部屋の前まで来ましたが、ちょうど同室の沢村さん、松山さんとそこで一緒になりました。
「大坂、いい機嫌だな」とか、ひやかされてぼくは嬉しそうに、「えエ、えエ」と首を振っていましたが、松山さんが部屋に入ったあと、沢村さんがぼくの首を抱き、覗きこむようにして、「ぼんち、熊本さんは」と囁くのが、てっきり、あなたの醜聞の一件を指しているのだと思うと、ぼくには、これ迄のこの人達の悪意が一ぺんに想い出され、気のついたときには、もう沢村さんの身体を壁に押しつけ、ぎりぎり憎悪に歪んだ眼で、彼の瞳を睨みつけていました。
瞬間、ア、しまった、と思った時にはすでに遅く、その隙に立ち直った沢村さんが、「貴様やる気だな」と叫びざま、ぼくを突きとばすと、直ぐのしかかって来て、ぼくの頸を絞めつけました。
そのとき松山さんが部屋から出て来て、この有様をみるなり、「おい、沢村よせよ、大坂はだいぶ酔っているぜ」