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オリンポスのかじつ
オリンポスの果実
田中 英光
「文学界」1940(昭和15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,277 字 · 147 页
変になるまで、憎んだのです。
その頃、整調でもあり主将もしている、クルウでいちばん年長者の森さんは、ぼくをみると、すぐこんな皮肉をいうのでした。「大坂は、熊本と、もう何回接吻をした」 とか 「お尻にさわったか」とか、或いは、もっと悪どいことを嬉しそうにいって、嘲笑するのでした。
七番のおとなしい坂本さんまでが、「大坂は秋ちゃんと仲が良いのう」とひやかし半分に、ぼくの肩を叩きます。六番の美男の東海さんは「螽みたいな、あんな女のどこが好いのだ。おい」と、ぼくの面をしげしげとのぞいて尋ねます。五番の柔道三段の松山さんは、「腐れ女の尻を、犬みたいに追いまわしやがって――」とすごい剣幕で睨みつけます。三番の、もとはぼくを正選手に引張ってくれた、沢村さんまでが、「あんな女のどこが好いかのう。女が珍しいのじゃろう。不思議だのう」と、みんなに訊ねるようにするのが癖でした。二番の虎さんは、広い胸幅を揺りあげ、その話をするときは、ぼくを見ないようにして、「でれでれしやがって」と、忌々しそうに、痰を吐きとばします。この態度が、むしろ、好きでした。
舳手の梶さんは、ぼくの次に、新しい選手ですし、それに、七番の商科の坂本さん、二番の専門部の虎さんと共に、クルウの政経科で固めた中心勢力とは、派が合わぬだけ、別に何んともいわず、皆と